東急百貨店東横店― 屋上遊園地と食堂の思い出

東急東横店の屋上遊園地

いまの渋谷に立ち並ぶ高層ビル群を見ていると、かつてそこに「家族の小さな楽園」があったことを忘れてしまいそうになります。東急東横店の屋上遊園地と食堂街――それは昭和から平成にかけて、多くの人々にとって“休日の思い出”を刻んだ場所でした。観覧車に乗って街を見下ろし、食堂でクリームソーダを味わう。そんな素朴で温かい時間が、渋谷の日常には確かに存在していたのです。

画像引用:NewsACT

目次

東急東横店の概要

1934年に開業した東急東横店は、渋谷駅に直結した百貨店として長らく親しまれてきました。本館・西館・東館に分かれ、ショッピングからグルメまでを網羅。中でも「屋上遊園地」と「大食堂」は、ただの商業施設を超えて“娯楽の殿堂”として人々の心に刻まれました。

屋上遊園地の思い出

屋上に上がると、小さな観覧車や豆汽車、メリーゴーランドが待っていました。子どもにとってはまさにテーマパーク。親が買い物をする間、屋上で遊ぶのが定番コースだった家庭も多かったはずです。

70〜80年代のにぎわい

日曜日の午後、屋上は子どもたちの笑い声でいっぱい。小さな手に握られたわたあめやアイスクリーム、ゲームコーナーのピカピカしたネオン。観覧車のゴンドラからは、渋谷のスクランブル交差点や東横線のホームを見下ろすことができ、子どもながらに「大都会を見ている」という感覚を味わえました。

食堂街とデパート食文化

屋上で思いきり遊んだあとは、百貨店の大食堂へ向かうのが“王道コース”。そこには子どもから大人まで楽しめる、いかにも昭和らしいメニューが並んでいました。

定番メニューの数々

お子様ランチの旗の立ったオムライス、ハンバーグ、ナポリタン。クリームソーダやプリンアラモードも忘れられません。どの料理も特別な日を演出してくれるごちそうで、子どもたちにとっては夢のような時間でした。

渋谷の風景

再開発と惜しまれた閉店

親世代にとってのデパート

親にとっても、デパートの食堂は「家族そろっての外食」の象徴。おしゃれなレストランよりも気取らず、それでいてちょっとした“非日常感”を味わえる場でした。休日のひととき、家族の笑顔が食堂のテーブルを囲んでいたのです。

午前は親がショッピングを楽しみ、子どもは屋上遊園地で大はしゃぎ。昼は食堂でナポリタンやお子様ランチを堪能し、午後はまた屋上で遊んだり、喫茶店でひと休みしたり。東急東横店は、まさに“家族で一日過ごせる百貨店”でした。

渋谷の街から昭和の百貨店が姿を消した

2013年、再開発に伴って東急東横店は閉店。屋上遊園地も食堂街も、その役割を終えました。最後の日には多くの人が訪れ、「観覧車に乗った思い出」「家族で食べたお子様ランチ」といった記憶がSNSに溢れました。華やかな再開発の陰で、渋谷の街から“昭和の百貨店らしさ”が静かに姿を消した瞬間でした。

まとめ

東急東横店の屋上遊園地と食堂は、ただの商業施設以上の存在でした。そこには家族の笑顔と、素朴で温かい時間がありました。現代の渋谷を歩いても、もうその風景は見られません。けれど、記憶の中で観覧車のゴンドラは今も回り続け、テーブルの上のクリームソーダはキラキラと輝いているのです。

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